宣言「映画を見に行くゾ〜 ダーウィンの悪夢編」


雨水となり、本当に雨多くなっている今日この頃です。なんとなく二十四節気を気にしている『GLOBAL MANAGER』編集人Sであります。

映画「ダーウィンの悪夢」を観ました。終了時は「う〜ん」と唸ってしまいました。

これもグローバル インパクト 代表パートナーの船川淳志さんが、グローバルビジネスにかかわる人は必ず観るべしと推奨していた映画です。確かにグローバリズムがもたらすものを考えるにはよい機会になるでしょう。直視できない場面もありますが、お薦めのドキュメンタリーです。

舞台はアフリカのヴィクトリア湖タンザニアケニアウガンダに囲まれた九州の2倍もある大きな湖)にあるタンザニアの街。50年ほど前、この湖に放たれたバケツ1杯の外来魚「ナイルパーチ」は肉食で、以前から湖にいた魚たちを食べつくし生態系を破壊してしまいました。弱肉強食の世界、グローバリズムの世界にも通じるものがあるでしょうか。大きなものは2メートルにもなるこのグロテスクな魚は湖畔で加工され、白身の魚としてヨーロッパや日本に輸出されるようになりました。タンザニアにとっては貴重な外貨獲得手段です。

内陸から多くの人がこの産業に寄りかかり始めたところから悲劇が始まったようです。魚をとり、加工して輸出するその仕事に全ての人がつけるはずもなく、貧困が始まりました。漁民を相手に、また魚をヨーロッパに運ぶ飛行機のパイロット相手に売春が始まり、エイズが広まり、粗悪なドラッグに親をなくしたストリートチルドレンが手を出す。かつて生物多様性の豊かさからダーウィンの箱庭と呼ばれた湖も環境悪化が甚だしい。こうした悲劇が次々に生み出されていく様子を丹念に追っていくドキュメンタリー映画です。

魚加工産業が確立されたとヨーロッパ人が胸を張るように、ビジネスモデルとしては完璧であり、かつ登場人物一人ひとりは誰も悪くないのに、どうしてこんな展開になってしまうのでしょうか。結局、ビジネスが成り立てばよいというそれだけでは何かが足りないということなのではないでしょうか。何故このビジネスを行うのかという点に関して崇高な理念が必要なのではないでしょうか。

ストーリーが進むにつれ、武器の運搬(密輸?)という重大なテーマが少しずつ輪郭を現してきて、「アンゴラの子供はクリスマスに銃を贈られ、ヨーロッパの子供はブドウをもらう」という飛行機のパイロットの言葉がむなしく響きます。

「映画のパンフレットと新聞の切抜きを並べて思い悩むS」

映画はこうして、徹底してこの街の負の側面をあぶり出そうとしていくのですが、一歩引いた見方も必要かもしれません。本年1月29日付日本経済新聞のインタビュー「領空侵犯」にタンザニア大統領 J・M・キクウェテ氏が「無償ODAは要らない・・・・・民間投資こそが経済の活力を生む」と答えていることからも明らかなように、タンザニアはアフリカの優等生なのです。「経済の安定が政治の安定につながり今では新たな投資先としてグローバル機関投資家から注目を集めています」と自国のPRにも余念がありません。天然資源に恵まれないのによく頑張っているのかもしれないのですが、今後はこの映画によって浮き彫りにされた経済発展に伴う負の側面をどのように克服していくか、世界中が注目していくことになるでしょう。

夜の赤坂では優等生のSでした。

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