宣言「映画を見に行くゾ〜 フラガール編」


『GLOBAL MANAGER』編集人Sです。啓蟄も過ぎてすっかり春めいたと思ったらまた冬に舞い戻り、春分となって今度はやっと暖かくなりそうな今日この頃です。相変わらず二十四節気を気にしているなって?何故、気にするようになったかはいずれ書きましょう。

フラガール」見ました。映画を見てこんなに涙が出たのは初めてです。俺にもこんなに涙が有ったのかと思いました。もう感激の「しまくらちよこ」でした。(いいんです。45歳以上の方が私に親近感を感じてくれるだけで、、、)

物語は今から約40年前の実話に基づいています。東北の斜陽産業の炭鉱が石炭需要の将来を見越して、地熱を利用してハワイアンセンターをつくろうとして、フラを踊る女性を募集するところから物語は始まり、東京からダンスの先生(松雪泰子)が招聘され、炭鉱夫(豊川悦司)の妹、紀美子(蒼井優)や同じく炭鉱夫を父に持つ娘、早苗(徳永えり)などが一から練習を始めます。そのうちの一人は最初に「何でも良いから踊ってみなさい」と言われ、真面目に盆踊りを披露。紆余曲折有りながら、オープンには立派な踊りを披露する、と言ってしまえばこれだけのストーリーに何故こんなに涙するのか、映画って本当に不思議です。

「逆境の中で自分たちの真実を追い求めていく人々の姿に先ず、共感を覚えた」という李相日監督、「人の感情を揺さぶる映画をつくっていきたい」という狙いは見事に達成されています。(日本経済新聞インタビュー記事2007年3月17日)


印象的な場面を少しだけ紹介します。

オープン前のキャラバンステージの直前、炭鉱での事故が伝えられる。ステージをキャンセルして炭鉱に戻るかどうかで若干の議論になりながら、ヤッパリすぐに戻ろうということになる。すると、家族が犠牲になった娘が絞り出すような声で訴える。「踊らせてくれんち」、この声を合図に、皆が、今やダンサーたちのリーダーとなった紀美子を見つめる。「おどっぺ」(踊りましょうの意)とプロの気持ちが芽生えた瞬間だ。

実は九州好きのSは宮城県生まれで、当協会の県人会会長であります。やっぱり、東北弁もいいなって思います。

この後、事故があったのに踊りを続けさせたとして責任を取らされた先生は、人知れず電車に乗って帰京しようとするが、ダンサーたちに見つかってしまう。先生に「行くな」と叫ぶダンサーたちの声を聞き、電車の中で席に身を沈めて涙する。すると、それまで叫んでいた彼女たちがホームで静かにフラを踊り始める。

フラは手の動きに全て意味があり、手話ともなっているので、声が聞こえなくても相手に意味は通じるのです。

「大切なあなたにアロハ 大切なあなたにアロハ 心の底からアロハ 唇の笑みを消さないで アロハ あなたの涙をぬぐって もう一度アロハ  さあ、もうさよならをいう時だ 大切なあなたにアロハ 夢の中で今夜はあなたのそばにいるから 祈っている 二人がもう一度会う日が訪れることを それまで大切なあなた アロハ」

フラはネイティブハワイアンの苦悩を表しています。有名なアロハ・オエという歌の歌詞の意味をご存知でしょうか。リリウオカラニ女王(1891年即位)が1898年アメリカによってハワイが併合された後、軟禁されていたときにこの歌を作ったのです。


甘い記憶が私に帰ってくる
過去の思い出が鮮やかに蘇る
親しいものよ、おまえは私のもの
おまえから真実の愛が去ることはない
アロハ・オエ、アロハ・オエ

「このおまえというのは誰なのか。女王自身が誰を、あるいは何を思ってこの甘美な詩を書いたにせよ、ハワイイ人の歴史を知るわれわれにはこの歌は古きよきハワイイへの哀惜と読める。残ったのは思い出ばかり。」(ハワイイ紀行【完全版】新潮文庫 池澤夏樹著より)


この歌が単なる甘いラブソングではなさそうであり、リゾート地のエキゾチックな雰囲気だけを楽しんでいるだけでは気がつかない、深遠な意味が含まれていることを知ると、フラに対する見方も変わってくるというものではないでしょうか。勿論、全てのフラがこうだとは言いませんが。

リズミカルなポリネシアンダンスは別として「フラガール」に流れるいくつかの哀愁を帯びたハワイアンミュージックの旋律が、炭鉱という故郷を失うものたちの共感を無意識に感じさせ、映画を見るものの心の深いところに訴えるが故に、余計に涙が多く出るのかもというのは考えすぎでしょうか。映画は日本アカデミー賞作品賞他たくさんの賞を受賞、それに相応しい素晴しい映画です。是非見て、泣いてください。

私のハワイ体験といえば、今から30数年前のその昔、松本亨英語専門学校主催のハワイキャンプ参加でした。そこで今のカミさんと出会ったこともあってか、常夏の南国気分に酔いしれて、ワイキキビーチで下駄を履いて歩き回り、ブルーハワイを飲みながら、すっかり浮かれていたのでした。

「嗚呼、懐かしきハワイ・・・」

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