一人旅で得たもの


こんにちは、編集部の牛原です。
一人旅、いいですねぇ。そーいえば今から10年前、一度だけ一人旅をした経験があります。それははじめて行ったポルトガル。その旅でポルトガルが大好きな国のひとつになりました。ヒースロー経由でリスボンに着き、その後ローカルのバスに3時間ほど乗ってポルティマン 〜PORTIMAO〜というところへいきました。
ポルティマンはこれといって特別何かがあるわけでもなく、港町らしくあちこちで魚の焼ける匂いがしました。裏道でおばちゃんが魚やイカを網に載せて焼いている場面に出くわしたときは、妙に懐かしい感じがしました。空が青くて、人が優しくて、こじんまりしたところが気に入り3日滞在しました。手に入れたての一眼レフカメラを首にぶら下げ、カメラマンさながらあちこち写真を撮ったことを思い出します。


にぎやかなリスボンに戻り、そこでポルトガルが好きになった2つの出来事がありましたので紹介します。ちなみに私は基本単純な感激屋なので、念のため。

一つ目はレストランでの出来事。この一人旅ではなんと言っても食事のときが寂しい時間でした。でもおなかはすくので、スーパーでサンドウィッチを買って海を相手に食事をしたり、つい馴染みのあるマックに入ったりしましたが、ちゃんとしたレストランにも入りました。観光客にありがちな(?)ぎっしりと物が詰まったリュックを背負った私は、あるとき勇気を出してちょっとおしゃれなレストランの扉を押しました。黒服のおじさんがカウンター席に通してくれ、そこでリュックを抱えて座っていたら、カウンターの中にいた優しい笑顔のコックさんがポルトガル語で話しかけてきました。どうやら「リュックを預かるよ」と言っているようでした。パスポートやカメラ、その他大事なものが詰まっているので躊躇していたら、私の目の前の棚を空にして「ここなら安心でしょ」といって預かってくれました。きれいなお店に見苦しいリュックがディスプレイされ、少々申し訳ない気持ちがありましたが、おかげでゆっくり食事が出来ました。そのお店では、隣の人が美味しそうに食べていたいわしの塩焼き(5匹も!)とパン、そしてデザートとコーヒーをいただきました。みなさんナイフとフォークを使い、上手にいわしを食べていました。

二つ目は、その後一人でガイドブックを見ながら企画した世界遺産などの観光中の出来事。トロリーバスの一日乗車券を購入し、気持ちよく出発をしたところ自分が降りるべき停車場を通り過ぎてしまったらしく、運転手さんにつたないポルトガル語で聞いたところ申し訳なさそうな顔をして「過ぎちゃったな」と。周囲の乗客も「あら〜」みたいな反応でした。次で降り何とか戻ろうと乗り換えのトロリーバスを探していたら、地元のおじさん(買い物袋に突っかけ、そこにあったカーディガンを羽織ってきました、みたいなまさに地元のおじさん)が、またポルトガル語で「どこに行きたいんだい」と声をかけてきました。一瞬引きましたが、とってもやさしそうな方だったので、持っていた目的地の写真を見せました。「OK」といって、乗り換えのバスに一緒に乗り込み、観光地の停車場に着くと一緒に降りました。おじさんにはよっぽど私が頼りなく写ったのか、ついには建物の入り口まで付き添ってくれて、「もう大丈夫だね、楽しんで!」みたいなことを言ってニコニコ笑いながら何度も握手し、帰っていきました。
私も負けずにすごく感謝を表したつもりでしたが、それがどこまでおじさんに伝わったか・・・。

実際は、短い期間ながら、これ以外にも似たような状況が多数ありました。
言葉が通じない同士なのに、相手が何をしたいのか相手の気持ちになって考えると言葉を超えたところでコミュニケーションすることができるのだ。そういう相手の気持ちになって考えてくれる人が、ポルトガルにはたくさんいました。この旅行を通して、ポルトガルが大好きになり、一方で日頃の自分を振り返りました。昨今日本、特に都心では知らない人とは余り関わらないようにする傾向(見てみぬふり)が強く、自分も含めて残念で寂しく思います。

10年たった今、またポルトガルを訪れたいと思う傍ら、人々が変わっていないことを密かに願う牛原でした。


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