日本のグローバル化と英語について


ご無沙汰しています。『GLPBAL MANAGER』編集人Sです。

早いもので、二十四節気寒露(かんろ:冷気が加わって露が秋の深まりを感ずる冷たさになった)という時節になってきました。このブログで二十四節気にこだわり始めたおかげで、ほぼ2週間ごとに季節の変わり目を意識していると、少しは自然に対する観察眼が鋭くなっているような気がしています。

先日、『GLOBAL MANAGER』とは別の仕事で、朝日新聞船橋洋一主筆を取材させていただく機会がありました。朝日新聞主筆室というところをお訪ねしたのですが、実に質素なお部屋で驚かされました。スタッフの方や秘書の方もいらっしゃるし、中央に6人がやっと座れるテーブルがあるだけの普通な感じだったのが印象に残っています。しかし、お話の中身は非常にインパクトがあり、私も大いに刺激を受けましたし、グローバルな活躍を目指す皆様方には是非ともご紹介したいお話と思いました。

船橋さんといえばご存知の方も多いとは思いますが、朝日新聞の記者時代に報道や執筆で数々の賞を受賞、本年6月26日付けで朝日新聞主筆になられた。最新刊は「日本孤立」(岩波書店)で、タイトルによると「世界を股に駆ける国際派知識人が、混迷からの脱出のためのヒントをさぐる本」です。迷える日本の現状を正しく認識するための必読の書だと思います。


【写真】 日本孤立・・・希望はあるか?あるとしたらどこに?


今回伺ったお話のメインテーマは、「英語」でした。氏は2000年に「あえて英語公用語論」(文春新書)を上梓しました。「21世紀日本の構想」懇談会(故小渕恵三首相の委嘱による諮問機関、河合隼雄座長)の報告書「日本のフロンティアは日本の中にある」が「英語公用語論」を提起して以来、日本では英語を公用語にする提案に対する関心と議論が沸き起こりました。氏はこの懇談会16人のメンバーの一人であり、問題提起としては成功したものの、その後の生煮えの議論に対する一つの回答として本書を著したのです。


【写真】 あえて英語公用語論・・・公用語法を制定し、日本語を公用語に、英語を第二公用語にするべきと主張。なぜ英語を公用語にするべきなのか?「日本が21世紀、世界の中でよりよく生きていくためである。」


以下お話の本の一部だけご紹介します。
日本はグローバル化の波に人・物・金・情報の各分野で追いついていっているところだろう。ところが、コミュニケーションという切り口で見ると、この部分だけはどうにも立ち遅れている。アラブや中国では英語でニュース番組を制作し、CNNやBBCとならんで、自分たちの視点から世界に情報を発信しようとしているのに、日本はどうか?自らの考えをわかってもらおうと、しっかりとした情報発信を行っているであろうか?内側でしか通用しないやり方で説明しておきながら、日本は特殊だからどうせ理解してもらえないと、内にこもる考え方になってしまっていないだろうか、そのような態度では世界との十分な「対話」が成り立たない。「対話」が成り立たなくて失敗した歴史があるではないか。

これからの世界ではどこも一国単独ではやっていけない。グローバルな目で見て、自分に相応しいベストな相手と組む必要がある。卓球の愛ちゃんを見よ、強くなるために中国でリーグ戦に参加することを選択したではないか。

また、アジア諸国が英語の重要性を認識して、まさに世界での生き残りをかけて、必死の思いで英語を身に付けているのに、日本の状況はどうか?数年前の英語公用語論を提起したが英語習得の環境が好転している気配は全くない。企業などできるところから、未来を見据えた新しい取り組みを開始するべきだ。

この他、日本の持続的な発展のためには大規模な移民を受け入れることが不可欠であるなど、英語によるコミュニケーション能力が必要となる背景を大所高所から論じてくださいました。コミュニケーションを成り立たせるためには先ず、相手に自分をわかってもらいたいというパッションを持つことが第1であるという点も箴言といえるでしょう。

今回のインタビューは財団法人 国際ビジネスコミュニケーション協会発行の「Newsletter 100号」(11月中旬発行予定)に掲載されます。船橋さんをはじめ、富士ゼロックス前社長・有馬利男氏、元国連事務次長・明石康氏、明海大学・小池生夫先生、東京学芸大学・金谷憲先生、東北大学・井上明久総長、昭和女子大学坂東眞理子学長といった錚々たる皆様に「日本のグローバル化と英語」というテーマで語っていただいています。来月末ごろには公式ホームページにも掲載される予定ですので、是非ご覧ください。


秋の気配と共に岩楯がいなくなり、このブログも今までより、真面目路線になりそうなどと感じつつ、Y編集長、モンちゃん、ウッシーとますますコミュニケーションを深めようと思っているSでした。


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