ウィーン珍道中 <最終回〜ウィーン1番のケーキと恐怖>





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みなさま、こんにちは。
お久しぶりの登場です、イイジマです。


『GLOBAL MANAGER』40号はいかがでしたでしょうか?
特集の、私費留学で自分の夢や希望を現実のものとした方たち、
「志のチカラ」の、STOMPのパフォーマー宮本やこさんなど、
その熱意やバイタリティには、制作しながら鳥肌が立っちゃいました。


まだ読んでいない!という方はコチラから、
読者登録がまだの方はコチラからどうぞ (^з^)/


そして昨日(3月18日)には「英語勉強法」がアップロードされました。
今回は40号特集でご登場いただきました小杉俊哉さん。
MITに留学する前、留学中の様子などが記されていて、大変興味深い記事となっています。
ぜひコチラからご覧くださいませ♪



さて、今号はウィーン紀行最終回でございます。
時系列に書いていったら、まさかこんなに長期にわたるとは・・・。
お付き合いいただいたみなさま いると思いたい、ありがとうございます!


過去の記事たちはこちらでございます!→ 1話目 2話目 3話目 4話目 5話目





次の日の朝、たっぷり7時間ほど寝て起きると、
爽やかな朝の太陽がお姫様ベッドを照らしていました。


「もうJは大丈夫ね。私たち助かったんだわ」
「数年後に振り返ってみたらこんなスリルな旅、いい思い出よね」
ふたりはすっかり安心して、かなり調子に乗っていました。


そしてチェックアウトを済ますと荷物をホテルに預けたまま、ウィーン市街へと再度繰り出すことに。
さっそく前日に新婚かぽーから聞いたラントマンというカフェに行こうと、
最寄駅と行き方を記した紙を片手に地下鉄に乗りました。


しかし駅について探せど探せどラントマンはなかなか見つかりません。
やがて足腰がどっと疲れてしまい、
「も、もうだめ・・・」とへばりこんでしまいました。


「なんでこういちいちうまくいかないのだろうか・・・・・」
今回の珍道中にもう呆れて疲れ果ててしまったところへ、
「あ、あそこじゃない!?」と、Mが声をあげました。


看板には、Rの頭文字、途中にTとMの文字が見えました。
「はぁああぁ・・・やっと着いた・・・。これがウィーン一番のザッハトルテを誇るカフェね」
私たちは疲労も忘れ、るんるん気分でカフェに入りました。



ところが、店内は2名ほどの女性客がいるだけで、ガラ〜ンとしています。
私同様、Mの頭にも「あら・・?ウィーンいちなのに?」という疑問が浮かんだにちがいありません。
入ってしまったからにはとりあえずテーブルにつく私たち。
もちろん、おのぼりさんなのでオープンテラスでございます。


口ヒゲをはやし、くたびれたワイシャツを着たおじさんがメニューを持ってきました。
どうやらここのマスターのようです。


メニューを開きながら、たまりかねてMにいいました。
「ウィーンナンバーワンのカフェにしちゃあシケてる気が・・・」
Mはキョロキョロと店内を見回しながら「・・・ほんとねぇ」
「それに美味しいスイーツのお店といえば、ウェイトレスにはきれいなお姉さんじゃないの?」
「でもほら、本当に美味しいお店とか歴史ありみたいなお店ほど、商品以外は質素だったりするじゃない」


気を取り直してメニューを開く私たち。
するとそこには3種類のケーキしか載っていませんでした。
「・・・・種類は少なくして味にこだわるってことね」
というMの言葉と笑顔には明らかに無理な力が働いています・・。


でも入ってしまったからには出て行くのも気が引ける小心者の私たち。
とりあえずザッハトルテをふたつ注文しました。
少ししてテーブルに運んできたそれらを半信半疑で口にしてみると、
なんともにちゃにちゃした不快な食感が口の中に・・・。


私「これがあの有名なザッハトルテ・・・ウィーンいちの・・・」
M「・・・・・・・・・・」 ←もはや何も言葉が出ない


さんざん歩き回って探し当てたので、このケーキこそがウィーンナンバーワンだと思いたい。
このにちゃにちゃ感も高貴な食感だと勘違いしたい。
そうでないと、私たちのウィーン旅行、今のところ何も良いことがないじゃないか・・・。
私たちはそんな気持ちでいっぱいになり、カフェやケーキの写真を撮ったりして一生懸命盛り上がりました。



やがて、マスターがそんな私たちのテーブルの近くにやってきて
「やぁ、彼女たち。ケーキはどう? おいしいかい?」と声をかけてきました。
あぁ、なんていいおじさん・・・。ウィーンに来て初めてオーストリア人からの優しいお声がけ・・。
やはりここがそのカフェよ。あのにちゃにちゃ感だってトレビアンな感じがしたわ。


「すみません、写真を撮ってもらえますか?」
フレンドリーなマスターに、私たちふたりの記念撮影をしてもらおうと頼みました。
マスターは快く引き受けてくれ、Mと私のツーショットを何枚か撮ってくれた後、
最後には自らも入ってきました。おちゃめでかわいいマスターです。



味はイマイチだったけど「ウィーンいちのケーキを食べた」という事実と
フレンドリーで優しいマスターにすっかりご機嫌でお店を後にした私たち。
すると、近くで祭事のようなものが開催されていたので行ってみることにしました。


開催場まで歩いている途中。
豪華で赴きのある建物に、広大なオープンテラス、
たくさんのお客さんで賑わっているステキなレストランが前方に佇んでいました。
「さすがオーストリア、テラスが広いねー」
などと話しながら近づいていく途中で、ある文字が目に入ってきました。


LANDTMANN


ここでしたか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・orz


しかもRじゃなくてL・・・・・・・・・。
ウィーンいち美味しいケーキがすぐ近くにあったのに
なにが悲しくてあんなにちゃにちゃした物体を私たちは・・・・・・・。


M「あのマスター、東洋からはるばる来た女子ふたりが
  こんななんでもないカフェでなぜ記念撮影を・・とか疑問はなかったのかしら・・・。
  自分まで一緒に写っちゃって・・・」
私「ほんと・・・・・・・・・・。どうせなら最後まで気づきたくなかった・・・・」


脱力しきった私たちは虚脱感に襲われ、
祭事会場に着いてもボーっと座ったまま身動きできずにいました。


そうこうしていると、今日ロンドンへと戻る私たちに時間が迫ってきました。
私たちは荷物をとりにあのホテルへと戻りました。
あ、一応、モーツァルト博物館にも手短に行きました・・・♪



「おかえりなさい。大変よ!」
ホテルにつくと、受付のお姉さんが血相を変えて私たちを呼び止めました。
お姉さんからはマリア様のような笑顔がすっかり消えています。
その様子を見て、私は荷物が紛失したのかということがまず頭に浮かんできましたが、
お姉さんは新聞の記事に視線を向けていました。


何の記事なのかさっぱりわらからない私たちにお姉さんは言いました。
「昨日、2軒隣のホテルで女性のお客ふたりを狙った強盗殺人事件があったらしいわ。
犯人は捕まったようだけど、警察に話を聞いたら、あなたたちが昨日つけられた男と特徴がよく似ているの。
背が高くてメガネをかけていて、被害女性を執拗につけていたようだって・・・。
おそらく土地勘がなくてスキのある観光女性を狙ったのだろうって言ってたわ」


ハンマーで頭を殴られたような衝撃を覚えました。
確かな証拠はないけれど、私もMも、
その犯人がJだという確信めいたものを本能的に感じたのです。


あまり良いことがなかったウィーン紀行のとどめをお見舞いされたようなあの恐怖。
あの階段を最後に、ウィーン滞在中にJの姿を見ることは二度とありませんでしたが、
何かがどこかで狂っていたら、殺されたのは私たちだったかもしれません。



そうして、私たちのウィーン紀行は幕を閉じたのでした。



〜完〜



<余談その1>


去年の末にウィーンの謎解き大紀行という番組がやっていましたが、
ご覧になられた方はいらっしゃいますか?
http://www.tbs.co.jp/wien2009/


偶然見た私は、すぐさまMにメールで伝えました。
その番組では、ウィーンは本当に魅力的で夢のような街に見えたのですが、
しかしMにはもう恐怖の街にしか写らないそうで、トラウマになっているようです・・。


チョコレートショップのかわいらしい店員のお姉さんが、
出演者の俳優さんに試食を薦めるシーンで、
「ビッテ(ハート)」とチョコレートを笑顔で差し出していました。


それを見たM、
「同じビッテでも私らが受けたビッテとはぜんぜん違うね・・・・」
とメールでつぶやいていました・・・。




<余談2>


今回、このウィーン紀行をブログで書くに当たり、記憶があいまいだったため、
どこへ行ったか、あれはどのタイミングだったかなどMに何度か聞きました。


どうやらメモる程度に手帳に日記をつけているようで、
彼女の手帳にはしっかりと
「新婚旅行カップル→ホテルへ→お姫様」
と書かれていたそうです・・・。
あのお姫様撮影会がMにとってメモに残すほどのビッグイベントだったとは・・・。


しまいには、
「こうして活字にして読むと、私たちって改めてアホすぎる・・・」
と、つぶやくではないですか。


「本当にねぇ・・・」
と力なく返しておきました・・・。



<余談3>


この話、誰にしても


「え〜、違う人じゃないの〜?」
「ただアジア人が珍しくて声をかけてみたかっただけでしょ」
「気のせいだよ」


と、あっさり流され、大笑いされてしまいます。


いいんです、Mとふたりで火サス顔負けのあの恐怖を共有しながら生きていきます・・・。




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